テレビ東京「お宝鑑定団」出演秘話



テレビ東京「開運!なんでも鑑定団・第1回楽器鑑定大会」に出た。
テレビに出るつもりは毛頭なかったが、ず〜っと長い間気になっていた物があったのだ。
うまくいって電話で幾らくらいか教えてもらえたらありがたい、という軽い気持ちで手紙を出してみた。
何故かふと。この「ふと」が、後々私を驚かせることになる。

その、気になっていた物とは、「鯨の心臓の皮で張った太鼓」である。
(後日、「心臓の皮」ではなく、「横隔膜」と判明。) そんなものをどうやって手に入れたのか。
今日のようにイルカや鯨のブームなどなく、話題にも出ないような20年程前から、鯨にものすごく魅力を感じ、細々と鯨グッズを集めていた。
若い女性が鯨に興味を持ち、鯨グッズを集めていることを知った鯨の研究者が、そのことをとてもよろこんでくれて、研究室の片隅に転がっていたその太鼓をくれたのである。
とても価値のありそうなものだったので、私ごときが頂いていいのか恐縮したし、どこでどのように作られて、何鯨の何で出来ているのかなど、色々伺おうとした時、別の研究者が「え〜!それあげちゃうのはもったいないですよ!」と口をはさんだ。

これはいけない、長居は禁物、とお礼もそこそこに研究室を後にした。
その後、いつか詳しいことを聞こう、と思いつつ聞かずに約10年の時が流れた。
その間、いくらでも伺おうと思えば伺えたのに、気になりつつもそのままにした。

なのにある日突然、貴重なものならやはりお返ししよう、と思い立ったのである。

手紙を出した事さえ忘れかけた頃、スタッフから電話が入った。是非出演して欲しいとのこと。
ところがその時悪い事に、下唇にすごく大きい口内炎が出来ており喋るとそれが見えるという、出演するには最悪のタイミングであった。
もともとテレビに出るつもりはなかったこともあり、お断りした。
(後日その口内炎は歯医者で切除されるという大ごとになった)
口内炎が出来ていなければ出演し、伸介さんや石坂さんとトーク出来たことだろう。

で、またもや忘れた頃、今度は「楽器鑑定大会」をやるからどうしても出て欲しいと電話が入った。
その「楽器鑑定大会」は出張鑑定という形式をとり、一人一人が写る時間がとても短いということもあって承諾した。
場所は銀座のYAMAHAホール。曜日は月曜日。会社に事前に有給届を出してその日に望んだ。
とても恥ずかしかったので、誰にも言わずに。当日はリハーサルもなく、いきなり本番。
上手く喋れるか不安だったが、松尾伴内さんのリードが良かったのか、なんだかんだと結構喋った。
鑑定結果は、、、?「珍品だけど、買う人はいないだろうから」と安かった。
後日テレビを見ると、最初は笑っていた私が鑑定結果を聞いた後、ちょっと怒った顔をしているのをカメラは見逃していなかったのがおかしかった。



さて、こんなことが裏話なのではない。ここまでは単なる前説である。
スタッフに聞いたところ、私に太鼓をくれた研究者に電話して、由来などを色々と教わったとの事。
非常に丁寧に熱っぽく語ってくれたと言っていた。
そして、「今となってはあげたことを少し後悔している。もったいないと後から思ったんだ。」という告白までされたとのこと。
う〜む。これはいかん。(遺憾?)

早速、番組にご協力頂いたお礼と、約10年間も何のコンタクトも取らず、頂いたままになっていたことのお詫び、テレビの放映日時などをお知らせしようと思い、所属されている大学に電話をした。先生の名前を告げると、電話に出た人がなぜか うろたえて、それでも先生の研究室に電話をつないでくれた。
でも先生ではない人が電話に出て、「自分もびっくりしているのだけれど、急死なさったんですよ」!!
え〜〜〜!!!???
「数日前、大変お元気だったと聞いたのですが」となんとか言葉にすると、「そうなんですよ、突然お亡くなりになったのです」...。

この約10年間のうち、どの時期であっても、先生とお話しようと思えば出来たはず。
それなのに、ふと思い立ってテレビに応募。
収録前の準備段階で協力してくれた先生がその放映日も待たずに亡くなられた...。
どう考えても、あの「ふと」思い立った時期が偶然のものとはとても思えないのだ。
非常に不思議なものを感じざるを得ない。

かなりのショックを受け、スタッフに電話。もちろん絶句。
でも「あげたことを後悔している」と言われたまま亡くなられてしまった私を思いやり、「先生の太鼓が日の目を見たのだから、きっと喜んでくださっていますよ。」と言ってくれた。

太鼓をどうするか奥様に伺おうと、今回のあらましを書き、お返しした方がいいかどうか手紙を出した。
でも返事はもらえなかった。
急死なさったのだから、見ず知らずの者からの手紙に返事を書く余裕などなかったのであろう。

それにしても、本当に単なる偶然だとは思えない。何らかの不思議な力が作用したとしか思えない。
そして、その太鼓は今だ私の家にある。大切にしたいと思っている。

ただ単に、能天気に出場しただけではない、舞台裏のご紹介でした。



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