「いずれにしても、展示室オープンのあかつきには、勇魚会の皆さんは必ず招待するので、是非いらして下さい…」 覚えていてくださるだろうか? 「勇魚」第30号の特集:全国海棲哺乳類だより−5 「私のくじらグッズ収集」の最終行である。 今回は思いがけず、続編の執筆を仰せつかった。光栄の至りである。 前回は約20年に及ぶくじらグッズ収集にまつわるエピソードを中心にお話させてもらった。 その際、本当はくじらグッズだけのお店を持ちたいがその甲斐性がないので、実現可能なところで自分のコレクションを展示してみてもらおうと思っているが、全然着手していないぐうたらな私、というところで終わっていた。 さらにHP(ホームページ)も開設する手はずだけは整えているが、、、というところで。 しかし、そんな私も一念発起し、ついに両方とも成し遂げたのである。 私のお尻をたたいたのは他でもない、ミレニアム、2000年の到来だった。 人間(私?)の習性 大きく出たが、結局おおかたの人間は、締め切り間際にならないと取り組まない、ということだ。 ごく少数の例外は別にして、殆どの皆さんは、次のテストは1ヶ月前から必ず勉強するんだと誓っても、結局一夜漬けでひーひー言いはしなかったか? もっと言うと、切羽詰まってくるといつもは全然しないこと、例えば部屋の掃除とか読書とかを何故かしてしまいはしなかったか? 現実逃避である。 とにかく少なくとも私はそうだったし、今でもそうである。 「くじらグッズコレクション展示室を公開する」「くじらグッズを入手方法などとあわせて紹介するHPを作る」 この2つは宿題でも仕事でもなんでもない。 やってもやらなくても誰も何も言わない。これが曲者なのである。 怠け心あふれる人間にとってこれはかなりの葛藤であった。 (好きなことなのにどうしてさっさと着手しなかったのか、自分でも理由がわからない) だがさすがの私も千年に一度のミレニアムを懸案事項を2つも抱えたまま迎えるのは潔しとしなかった。 絶対に1999年中に2つとも成し遂げるんだ!と誓ったのである。 キーマンの登場 話が飛ぶが、私のいる会社の社員は約700名だが、私と同じ大学の出身者は社長一人だけだった。 不思議なほど出身校の話をしない会社なので他にいたかも知れないが、私は知らなかった。 ところがひょんなことで、前から知っていたある社員が後輩であることが分かった。 その上、住んでいるのも同じ路線。急激に親近感が沸く。唯一の後輩が出来てとても嬉しかった。 そしてさらに彼はシステム屋さんだったのだ! 先輩風を吹かせたかと思うとゼロからタグの教えを乞う、300通強のメール交換の始まりである。 (ここでは彼をKOと呼ぶ) 産みの苦しみ (インターネットを見られる方は、表紙だけでもご覧になってから読んで頂けると臨場感が出るでしょう。(後日更新:http://www.maroon.dti.ne.jp/whale/index.html)) またもや大きく出たが、ゼロから何かを作り出すというのは本当にパワーがいる。 ましてや今まで使ったこともない言語を駆使しなければならない場合はなおさらだ。 KOからHP作成に不可欠な「HTMLタグ辞典」をいただく。 (初めてのOB会(でも2人きり)で「きのう私、誕生日だったの!」と殆どプレゼントを強制したのだった、、、。ごめんね、KO) しかしこれは取りも直さず「イージーなホームページビルダーは使わない」ことを意味するのだった。 あとは時系列で振り返ってみよう。
一方、実際の展示室の方は? 玄関から一番近い洋室を展示室候補とし、グッズを全て集積して約3年が過ぎた。 ああ、家賃の3分の1(2DKだから)がぁぁぁ〜、、、。 その間、これぞっ!という棚を色々と探し回ってはいたが、なかなか見つからない。 ある時、いいのが見つかるまでレンガと板で安上がりに棚を作るかと思い、近所のホームセンターへ。 なんだかんだ言って結構値が張ることがわかったが、ここで手ぶらで帰ったらまた何ヶ月も無為に過ごすかも、、、と思い購入。 レンガを積み、板を置き、またレンガ。ちょっと貧乏くさいが棚は出来た。 早速並べてみる。ちょっとしか並べられないことに気付く。 片側全面使ってもこれだけしか並べられないの?もう片側使っても全部は到底並べられないな。 まあいい。少しでも前進したことに満足する。 しかし、ある日会社にいる時、地震が!ああ〜っ、レンガが崩れるぅぅぅ〜!!! 気が気じゃなかった。やっぱりこれじゃ駄目だ。 床から天井まであるつっぱり型の棚の購入を決意(取り敢えず片側分のみ)。 そして購入。高いっ! でも「グッズが壊れる〜」とビクビクする精神衛生上の問題を考えると必要な出費と自分を納得させる。 さあ、組み立て。到底ひとりで出来るものではないことにすぐ気付く。 職場でさりげなくお願い。 約4名が快く手伝いを買って出てくれた。ありがたや。 当日はお昼は手料理、夜は外食でせめてものおもてなし。 結局、レンガ棚はレンガ棚でそんなに不評ではなかったので、壊れにくい物(たとえばタオル類とか、文房具とか、お菓子の箱とか)の棚として存続決定。 両脇全面に棚があしらわれ、俄然、展示室らしくなる。 洋服掛けを買って、Tシャツをクリーニング屋さんのハンガーにかけ並べる。 安いマネキン型ハンガーを買ってくじらの水着を着せる。 ネクタイも展示したいのでネクタイ掛けを通販で購入。 くじらの傘をくじらの傘立てに立てる。 くじらのモビールを天井からつるす。うきうき。 そうそう、ガラス物やアクセサリーを飾る、背面がガラスのキュリアケースが欲しい。購入。 そうなると、ライトを当てたい。3つのライトがついているライトスタンドを購入。 そうかと思うと、レンガ棚で余った板に画鋲を等間隔にとめて、キーホルダーを飾る。 貧乏くさかったり一点豪華主義だったりして統一性がないが、私の葛藤(こんなにお金を使っていいのか?いや、ここで使わずしていつ使う!など)をそのまま表わしているようで、それはそれで面白いと思っている。 結局、洋室だけでなく、玄関もくじらグッズで一杯になった。 玄関ドアの内側はくじらのマグネットで一面おおわれているし、結局キュリオケースは玄関に進出してきたし、壁にはくじらの掛け時計が5つも飾られてるし、、、。 ということで、宅急便のお兄さんや郵便屋さんが来た時に非常に恥ずかしいのである。 彼らは気を使って何も言わないが「ここは一体何だ?」という困惑の色は隠せない。 それから大家さんにもひょんなことでくじら部屋を窓の外から見られた。 何も聞かれていないのに「あのー、釘なんかは一切使っていませんから、ええ、決して、、、」あわあわ。 かえってあやしさ満点だっただろう。 なんだか順調にいったような書き方だが、それはこの原稿の締め切りが迫ってきたから(3ヶ月も前から依頼されてたのに、締め切りギリギリに書いています、、、)はしょっているわけで、実際は棚の購入先を教えてくれたり、並べるのを手伝いに来てくれたり、プッシュや励ましのメールをくれたりした友人達に支えられて、ようやっと、というのが現実である。 最後の最後は自分を追い込む為、クリスマスツリーを買った。 くじらライトをあしらい、展示室の中央に置く。 クリスマスまでにオープンさせないと、せっかくのツリーを片付ける羽目になる。 結果、1999.12.18 感動のプレオープンを迎えた。 高校以来の友人とその子供達の予約だ。 玄関ドアにくじらのオーナメントを飾る。飾り棚を照らすライトをつける。 くじらのトイレットぺーバーにかえる。 1時間以上も前からドキドキして何も手に付かない。 そして子供ともども大変に喜んでくれた。純粋に嬉しい。 今後の展示室運営の為にアンケート(子供用アンケート「どうだった?」もあり)にご協力頂き、写真を撮り、最寄り駅までお見送り。ああ、幸せ。 年内にあと2組おいで頂き、HPで一般の方から展示室見学の予約を受け付けても大丈夫、との手応えを感じ、当初の予定通り2000.1に展示室OPEN!とHPに公開した。 オープン後は、来室者のアンケートの意見を取り入れ、くじらの声のテープを流したり、くじらのカードを整理してあるファイルを見る為の机や椅子をセットしたり、と日々改善している。 ただ、まだ飾れていない物もある。ポスターである。本当はとても飾りたい。 天井にでもはろうかとも思うが、それでも2,3点しか飾れない。 地下鉄のおじさんや商店街の会長さん、企業などにお願いして手に入れた珍しい物もあるのに、、、。 いかんせんスペースが、、、。くじらの歯やひげも飾れていない。布やカレンダーもしかり。う〜む。 時々展示物の入れ替えでもするか、、、。 当展示室は、東京の新宿から出ている小田急線の祖師ケ谷大蔵駅から徒歩4〜5分です。 (後日加筆:2014年8月より東京スカイツリー近くに移転しました) 東京近郊の方、東京に学会などで来られる方、よかったら是非おいでください。 前回の原稿に載っている巨大ぬいぐるみや、テレビ東京の鑑定団で放映されたくじらの内臓の皮で張った太鼓等が皆さんをお迎え致します。 電子メールかお電話(著者プロフィールもしくは名簿参照)で日時をお知らせ頂くだけで結構です。 そして当たり前ですが、無料です。 勇魚会の皆様と、当展示室でお会い出来ることを心から楽しみにしております。 ・・・「勇魚」第32号より ・「勇魚(いさな)」・・・勇魚会機関誌(年2回発行) ・「勇魚会(いさなかい)」・・・海産哺乳動物に関心のある人々の親睦を図り、情報交換をすることを目的にしている。研究者や研究者の卵、水族館や大学勤務者など、200名強の会員がいる。 |
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